私は地方の小さな町に暮らしています。ここ数年、この町の風景は少しずつ変わってきました。かつて賑わっていた商店街には空き店舗が目立ち始め、老舗デパートは静かに灯りを消し、新たに挑戦する店も短命で消えていきます。これは単なる一時的な不況ではなく、人口減少という地方が直面する厳しい現実の顔なのです。
振り返れば、かつては「何をやっても成り立った」黄金期がありました。特別な味やサービスがなくとも、普通に商売が成立した時代。しかし今、どの店に足を運んでも一定以上の品質が当たり前になり、生き残りの決め手は「味や技術」から「価格」と「効率」へと移行してしまいました。
この流れは必然的に、規模の経済と標準化された品質管理を武器とする大手チェーンに有利に働きます。結果、街角の小さな店々は、静かに、しかし確実に廃業への道を歩むことになるのです。
効率化の先にある空虚
もしこの現実を「時代の流れ」として諦めるなら、我々に残された選択肢は「人件費削減」や「AI活用による効率化」だけです。でも、本当にそれだけでいいのでしょうか?その先に何が残るのでしょうか?
答えは明確です——「人間の価値」は、やがて”創造力”という一点にしか宿らなくなるということです。
価値の源泉の変遷
産業革命期:体を動かす「労働力」に価値があった
情報化社会:知識を蓄えた「学力」が力を持った
そして現在:AIとテクノロジーがそれらを次々と代替する時代に突入した
では、これからの時代、人間にしか生み出せない本質的な価値とは何か?
それは「創造力=クリエイティビティ」です。新たな価値を生み出し、意味を紡ぎ、問いを立てる力。それこそが、これからの時代に求められる唯一無二の「差」であり、揺るがない価値となるでしょう。
しかし、ここで一つの落とし穴があります。「クリエイティビティ」が単なる”金稼ぎの道具”と化してしまうと、本来の創造性は枯渇してしまうということです。
「拍手」という新しい評価軸
私はずっと考えてきました。「お金」ではなく、「拍手」で評価される世界を創れないだろうかと。
劇場で感動的な舞台を観たとき、最初はまばらだった拍手が、誰かの勇気ある一拍から始まり、次第に広がり、やがて会場全体がスタンディングオベーションに包まれる瞬間——。
この自然発生的な評価の連鎖こそが、これからの社会経済における評価のあるべき姿ではないでしょうか。
実は、YouTubeのアルゴリズムはこれに近いものがあります。最初は小さなコミュニティで支持を集め、ある閾値を超えると更に多くの人の目に触れるようになり、共感の輪が広がっていく。これは「拍手経済」のデジタル実装とも言えるのです。
「拍手がお金を超える」世界——つまり、共感・感動・応援といった”非金銭的価値”が経済を動かす仕組み。これは単なる理想論ではなく、むしろ地方のような”縮小社会”だからこそ実現可能なモデルなのです。
小さな町から始まる「価値の再定義」
私が提案する「共同体的資本主義」の姿は——
クリエイティブな価値を共感で測り、拍手(=熱量)で可視化する
評価は小さな輪から始まり、共鳴の強さに応じて社会へと波及する
誰であれ、本物の価値は必ず認められる(逆もまた然り)
金銭報酬以上に「評価」と「つながり」そのものが、信頼資本として流通する
人口減少時代だからこそ、小さな町だからこそ、このような新しい経済圏の実験が可能なのです。ここから、拍手が通貨となる経済、そして人々の心をつなぐ”共感のインフラ”を築いていく——。
そんな未来を信じて、私は一歩を踏み出しています。あなたも、この小さな革命に拍手を送りませんか?
株式会社SANDWICH
代表取締役 保木賢人
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